当社の海外事業は現在、ASEAN地域、そしてオーストラリアやアメリカなど世界各地に広がっており、住宅分譲事業だけでなく、オフィスビルや商業施設の運営、そして物流倉庫事業など、展開する分野も多岐にわたります。それぞれの国の文化やニーズに深く向き合いながら、日本で培った総合不動産デベロッパーとしてのノウハウを活かした幅広い事業を推進しています。
今回はその中でも、海外展開の足掛かりとなり、現在も数多くのプロジェクトが進行するASEAN地域に焦点を当ててご紹介します。
INDEX
100年の歴史が培った「住む人」に寄り添うDNA

阪急阪神グループは、100年以上の歴史の中で、豊かなライフスタイルを提案し、魅力あふれる沿線づくり、まちづくりに携わってきました。「住む人を第一に考え、その暮らしを支える」という思想をはじめとするDNAは、国内に留まらず海外へも広がっています。
海外で事業を展開するうえで当社が最も大切にしているのは、現地の文化や習慣を深く理解し、現地のパートナー企業と協働しながら、当社ならではの街づくりのノウハウを掛け合わせ、新たな価値を提供することです。
そうした思いのもと、ASEAN各国で展開するプロジェクトでは、現地の文化と日本のノウハウがどのように融合し、新たな価値を生み出しているのか、具体的な事例を紐解いていきましょう。
現地の熱量から学び、日本の知見と融合させる――インドネシアでの施設運営
インドネシア・西ジャカルタの大規模商業施設「セントラルパークモール」。ここでは、施設運営において、これまで日本で培ってきた運営管理の知見を一方的に持ち込むのではなく、現地の商習慣と最適な形で融合させることを重視しています。

インドネシアの商業施設には観光地的な側面もあり、大規模なイベントが年間を通じて開催されています。当社としても、現地ならではのSNSを活用したリアルタイムな発信力やイベントを通じた集客の熱量から日々多くのことを学び、それを運営に活かすことで、施設の資産価値や街の魅力をさらに高めています。
( 参考:ASEANに広がる阪急阪神不動産の挑戦 https://www.hhp.co.jp/hitomachi/article/asean.html )
日本と同じ『靴を脱ぐ文化』――ベトナムでの細部へのこだわり
ベトナムのプロジェクトでは、現地のライフスタイルを深く尊重しながら、日本のきめ細やかな視点を取り入れました。一つの例が、玄関の空間設計です。
ベトナムには、日本同様に室内で靴を脱ぐ文化があります。しかし、従来のマンションタイプの住宅では、玄関とリビングの床材が同じで境界線は曖昧。また、共用廊下に靴などが置かれることも多く、靴箱を設置するスペースが確保されているかどうかも間取りによってさまざまでした。
そこで玄関の床材をタイルに変更し、リビングと明確に切り分けると共に清掃性を向上。併せて、靴箱の設置を想定したスペースをすべての住戸で確保するように変更しました。

玄関とリビングを明確に切り分ける空間設計
そのほか、トイレットペーパーホルダーやスイッチ位置など、改めて使い勝手の観点から変更を行いました。また、排気や配水ルートを整備することで、これまで発生していた下がり天井を減らすなど、小さな工夫を重ねることで、現地の住宅の間取りや空間の使われ方に、前向きな変化をもたらしています。

トイレットペーパーホルダーの設置位置の改善
日本での商品企画を現地のニーズに適応させる――タイでの展開
タイにおいては、日本で培ったノウハウやお客さまの声を活かし、パートナー企業と試行錯誤しながら現地の文化やニーズに合わせてローカライズしています。その軸となるのが、日本で展開している独自の商品企画プロジェクト「ジオフィット プラス」※の考え方です。日々の家事や暮らしをより快適にする工夫や、万が一の事態に備える安心・安全対策など――日系企業ならではの視点を評価いただき、積極的に導入しています。
※ジオフィット プラス
お客さまの声を集め、検証し、より快適な住まいを生み出すサイクル型商品企画プロジェクト。想いやアイデアをカタチに変え、住まいをアップデートする「ジオフィット+itumo」、省エネや創エネなど持続可能な暮らしをかなえる「ジオフィット+tunagu」、日々の安心や安全を重視し、ご家族と暮らしをまもる「ジオフィット+mamoru」の3つの視点からの独自の住まいづくり。
https://geo.8984.jp/geo/quality/?tab=geo_fit

(左)清掃性・耐久性を考慮したキッチンカウンターの「三方立ち上がり」 (右)洗濯機上収納の下に便利なハンガーパイプを設置

(左)マンション屋上に設置された「太陽光パネル」 (右)簡易トイレや非常用飲料水等を備蓄している「エレベーター内防災キャビネット」
理想の住まい探しにおける体験価値の向上――フィリピンでのセールスギャラリー導入
フィリピン・マニラにおける住宅分譲事業(戸建・タウンハウス)では、お客さまの体験価値の向上に注力しています。
これまで、現地デベロッパーの多くは、プロジェクト現地にモデルハウスを設置するに留まり、プロジェクト全体のビジョン、周辺環境、そしてお客さまに購入後の具体的な生活を総合的にイメージをしていただくいわゆる「セールスギャラリー」の概念は、広く浸透しているとは言えませんでした。
そこで当社は、日本で培った経験を基に「ショールーム」のコンセプトを取り入れ、街区全体を俯瞰できる模型や商品説明パネルを展示したほか、お客さまに落ち着いてじっくりと検討いただける商談スペースも設置しました。加えて、パートナー企業や販売員の方々には、日本まで足を運んでもらい、日本の販売手法やホスピタリティを直接体験していただくことで、顧客満足度を高める提案力を強化しています。
このような取組により、お客さまは単なる物件の見学に留まらず、将来の生活像をより鮮明にイメージし、これまで以上に深い納得感を持って検討・購入いただけるようになりました。その結果、好調な販売へとつながっています。
セールスギャラリー外観

モデルハウス
課題に向き合う「誠実さ」という姿勢
海外事業においては、市場の変動や予期せぬトラブルなど、容易には答えの出ない課題に直面することもあります。
例えば、2025年3月28日にミャンマーで発生した地震により、タイでも被害が生じた際には、災害経験の少ない現地に対し、地震大国である日本で培ったノウハウを活かしたサポートを実施しました。この地震をきっかけとして、ご入居者さまに向けた防災ガイドブックの提供のほか、建物そのものの品質を高めるための工事現場の巡回方法やチェックリストの展開など、当社の住まいブランド〈ジオ〉が育んできた「品と質」は、国境を越えてタイでも活かされています。

ジオの品質管理担当者が現地へ向かい、施工監理の細かな視点をレクチャー
各現場で培ってきた「お互いの信頼関係」があるからこそ、不測の事態においても地道な協議を重ね、一歩一歩着実に前へ進むことができます。この誠実な向き合い方の積み重ねこそが、次なるプロジェクトへとつながる強固なパートナーシップの基盤となっています。

タイで強固な関係を築いている現地パートナー(セナ社)と当社メンバー
これからもその国の人々が誇りに思えるようなまちを、現地のパートナー企業や地域の方々とのつながりを大切にしながら、共に創っていきます。